プリント基板用防湿コーティング剤の種類や特徴について解説!
 
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プリント基板用防湿コーティング剤の種類や特徴について解説!

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プリント基板用防湿コーティング剤の種類や特徴について解説!

更新:2021.9.20  公開:2019.1.15


プリント基板は電子機器には欠かせないコンポーネントです。プリント基板を湿気から守るためには、防湿コーティングを施すことが重要となります。プリント基板の防湿コーティング剤には、幾つかの種類があり、それぞれに特徴があります。
本記事ではプリント基板用コーティング剤の種類や特性、おすすめの防湿コーディングについて紹介致します。

 

1.基板保護用コーティング剤全般

様々な電気機器に使用されるプリント配線板や実装部品では、以下のような物質の存在や現象が回路の短絡や断線、電流漏洩などの不具合を引き起こすことがあり、機器の動作不良や故障の原因となります。

  • ★結露
  • ★浸水
  • ★金属マイグレーション
  • ★硫化水素や塩化水素など酸性物質
  • ★リチウム電池電解液

コーティング剤の樹脂皮膜によって、これらの物質や現象から回路を遮断・保護することによりトラブルを未然に防ぐことが可能となります。
プリント配線板や実装部品の保護用コーティング剤としては、常温型フッ素コーティング剤をはじめとして、ウレタン系、アクリル系、シリコン系、オレフィン系など様々な樹脂を皮膜成分とするコーティング剤が長年にわたって使用されてきました。

 

2.基板用防湿コート剤の種類と特性

この項では基板用防湿コーティング剤の樹脂別の特性について考案したいと思います。

 

2-1.ウレタン系・アクリル系

自動車のエンジンコントロールユニット(ECU)基板に長年の実績があり、基板用コーティング剤としてはスタンダードに使用されています。ですが、以下のような問題があります。

  1. 1.防湿性があまり高くないので、保護機能を得るためには高膜厚が必要となります。その結果、基板の重量が増加します
  2. 2.耐酸性も高くないので硫化水素などの酸性物質から基板を保護することができません。
  3. 3.引火性有機溶剤を使用しておりますので、火災や爆発の危険性や中毒などの健康影響などがありあり、法的には以下のような管理が義務付けられています

消防法

  1. ①危険物数量管理(法定数量を超える使用または保管の場合は危険物取扱所・危険物貯蔵所の認定が必要となります。)
  2. ②換気扇や照明器具などの電気機器が防爆仕様である必要があります。
  3. ③危険物取扱責任者の選任

安衛法

  1. ①取扱者の定期的健康診断(半年ごとの有機溶剤検診)
  2. ②作業場の定期的環境測定
  3. ③作業現場での標識表示

 

2-2.シリコン系

RTVが中心でポッティング剤としても使用されるタイプなど多種類の製品があります。
皮膜がゴム状の柔軟なタイプで、低温でもしなやかなためクラックを生じる危険性が少なく、多方面に実績があります。ポッティングに使用した場合は基板全体をブロック状に固めることができ安心感があります。
シリコン系の短所としては、以下のような点が挙げられます。

  1. 1.湿度を通しやすく、防湿性は前述のウレタン系アクリル系よりもさらに劣るので、膜厚を高くして防湿機能を得ることになります。基板重量は大幅増となります。
  2. 2.タイプによっては低分子の環状シリコン化合物(オイル状物質)が発生拡散いたします。スイッチ接点などの接触不良の原因になることもあります。最近では環状シリコン化合物の環境への拡散が問題視されています。
  3. 3.使用現場が汚れるので、取り扱い作業者が嫌がります。
  4. 4.ポットライフを持つものがほとんどで、ライフ切れにより無駄を生じることがあります。

 

2-3.オレフィン系

ゴム状皮膜を形成します。低温下でもクラックが発生しにくく防湿性も高いです。
短所としては、以下のような点が挙げられます。

  1. 1.有機溶剤を含有しており、取り扱い時には上記のウレタン系・アクリル系と同様な管理が法的に義務付けられております。
  2. 2.前述のウレタン系・アクリル系、シリコン系、フッ素系は皮膜の不燃性規格UL-94 のV0(樹脂片の燃焼が持続せず。自然に消化する)という不燃性を保持しておりますが、オレフィン系の一部の製品では不燃性では無いものがあります。

 

2-4.フッ素系

常温型フッ素コーティング剤については、ほかの樹脂コーティング剤に比べて下記のメリットがあります。

☆同じ膜厚で比較した場合、ほかの樹脂に比べて数倍以上の防湿性や耐酸性がある。いいかえるとフッ素系コーティング剤は他樹脂よりも薄い皮膜で効果を発生するので、塗布後の基板重量が少なくて済みます。
☆皮膜に耐酸性があり、リチウム電池電解液や硫化水素などからも基板を保護することができます。
☆引火性がないので安全性が高く、消防法 安衛法有機則など法的規制もありませんので管理が容易で、設備投資も防爆性不要で余分なコストがかかりません。
☆低粘度で塗布が容易で低臭気なので、作業環境にも優しいです。

従来では、フッ素系コーティング剤として撥水撥油用に開発された商品が流用されてきました。フッ素系撥水撥油処理剤は皮膜が脆いので、マイナス20℃から100℃が繰り返されるサーマルショックでクラックを生じやすく、数ミクロン以上に膜厚を上げられないデメリットもありました。膜厚と防湿性・耐酸性は比例するため、せっかく防湿性・耐酸性の高い樹脂を用いていても十分な性能を発揮できないジレンマを生じるわけです。
弊社では、その弱点を克服すべく基板用防湿コーティング剤として専用の分子設計でフロロサーフ FG-3000シリーズを開発いたしました。このシリーズは20ミクロン以上の皮膜厚でも、サーマルショックでクラックを生じない柔軟な皮膜となっており、フッ素樹脂が本来有する高防湿性と高耐酸性が十分得られる膜厚でプリント配線板を強力に保護することができるようになりました。


 

3.常温フッ素コーティング剤で効果的に防湿できる活用事例

最後に、常温フッ素コーティング剤がどのような現場で使用されているのかについてご紹介します。

常温フッ素コーティング剤は、高い防湿性と+αの優れた性能から、様々な分野・シーンで広く活用されています。生活のあらゆる面で機械化・IT化が進む現代では、製品の耐久性や品質の向上のために常温フッ素コーティング剤はなくてはならない存在となっている、と言えるでしょう。

 

3-1.スマホ等モバイル機器の基板保護

常温フッ素コーティング剤の使用が重宝されているシーンとしてまず挙げられるのが、モバイル機器の基板の保護です。
スマートフォンなどのモバイル機器では、軽量化は大きな性能の要素です。常温フッ素コーティング剤は数ミクロン程度の薄い膜でも効果を発揮するので、重量を増やしたくない場合に最適です。
また、モバイル機器には、短時間の充電で長時間動作する高性能なリチウム電池が搭載されています。モバイル機器に落下などの衝撃を与えた場合、電池電解液が漏洩して強酸が発生し基板が短絡することで発火する事故がしばしば発生します。フッ素コーティング剤は樹脂系コーティング剤の中でも、電池電解液に対する抵抗性が最も優れており、電解液の漏洩がおきても基板回路を保護するので発火事故を未然に防ぐことができます。

同様な理由(軽量化、電解液対策)で、最新の航空機の電子基板にも弊社のフッ素コーティング剤フロロサーフが使用されております。

 

3-2.屋外機器の基板保護

室外機器の基板保護
エアコンや温水器などの室外機器は屋外で使用されるため、部品や基板が劣化しやすくなります。そのため、室外機の基板についても、常温フッ素コーティング剤で保護を行うことで、モバイル機器と同様に防湿性によるメリットが得られます。雨風が直接当たる可能性のある室外機気は、より念入りな保護が必要となります。
汚れも付きやすい環境下での使用するため、常温フッ素コーティング剤の防湿性以外にも撥水撥油性・防汚性でしっかりと基板を保護することができます。 同様にLED看板やLED信号機の屋外機器の基板にも最適です。

 

まとめ

湿気や水分は基板回路を劣化させる大きな原因となっています。そのため、防湿コーティング剤は様々な分野のプリント基板に広く使われています。使用を検討する場合は、用途や使用状況に合わせて適切な防湿材が使い分けることが大切です。
特に常温フッ素コーティング剤は、防湿性能以外の機能にも優れており、多方面での活用が期待できます。
防湿コーティング剤の導入を検討する際は、対象製品が防湿性以外にも必要としている機能があるのかについても注目していただければ幸いです。

撥水撥油性、防汚性を兼ね備えた防湿コーティング剤は、フロロテクノロジー「フロロサーフ」を御覧ください

この記事を書いた人
技術営業部 営業課長 山本弘志の画像
代表取締役 伊藤隆彦

経歴

1959年生まれ
三重大学で卒研としてフッ素系撥水撥油処理剤の改良合成を行いました。
卒業後コンタクトレンズの会社に就職。
8年間勤めた後、不思議な縁でフッ素化合物の世界に戻ることになりました。
以降業界歴通算33年を超えました。